1982年『ブレードランナー』編

SF映画の「二次映像」を使いこなせ

──『ブレードランナー』は劇場公開後も『ディレクターズ・カット』版や『ファイナル・カット』版など、さまざまなバージョンが作られましたよね?

押井 劇場で最初に見たときから「ナレーションは要らないな」と思っていた。うるさいだけだから。のちに『ディレクターズ・カット』でナレーションが削除されて、途端にしっくりした。アメリカ映画でよくあるんだけど、見ていくうちに主人公を理解していく手法がベストだから、ナレーションは要らないんだよ。でも当時はナレーションのバージョンしかなかったから、それを何十回も見た。『エイリアン』も劇場に何回も見に行った。カット割りを記憶して帰って、家でコンテを切ってみたぐらいだから。それをそのまま、『ニルスのふしぎな旅』(80-81)で使ってみたりもした。納屋でフクロウが飛び出してきてビックリっていう回(第49話『秘密を知ったニルス』)なんだけど。

──『ニルス』を確認してみましたが、本当にやっていましたね。

押井 カット割りがうまいというだけじゃなくて、『エイリアン』の場合はセット数が限られていたから、二次映像(※レーダー画面などの表示映像)を非常にうまく使っていた。僕も『機動警察パトレイバー2 the Movie』(93)や『攻殻』はその手法で作った。ナビゲーション画面とか追跡地図表示とかを使うと、意外に安く済むんだよ。簡単なCGをビデオエフェクトにして画面に載せるだけだから。だけど効果は絶大。実は二次映像で勝負しているんだ。

──ジェームズ・キャメロンの『エイリアン2』(86)も二次映像を駆使していましたね。

押井 特にSF映画をやる場合は、二次映像の使いかたが肝になる。単純な画面なんだけど、それだけでグンと臨場感が出る。普通のドラマでは(レーダー画面を出すなんて)できないから。ビデオエフェクトを用いた二次映像で架空のリアリティをどう出していくか? 情報をストレートに開陳するんじゃなくて、二次映像を用いて、どう説得力をもたせていくか? 『エイリアン』は二次映像と省略の演出がとてもうまかった。小惑星の宇宙船の外見なんて1カットしかないんだから。あとは、それを探し回っている連中の主観のビデオ映像。その中間は、実は何もないんだよね。ものすごい嵐ということにして、なにが写ってるんだか分からない。それでいきなり宇宙船のなかに入っちゃうんだから。そういうテクニック、つまりは演出だけど、サーはメチャクチャうまい人なんだ。だから、『ブレードランナー』も同じようにやるだろうなと思っていた。見つけた写真をイメージスキャナーで拡大していく場面もそうだよね。ビデオエフェクトを効果的に使っている。