ごっつい外観、果てしなく重い。スピーカーから流れくる音楽は心地よいスローバラード。 世の中に、これほどいとおしく、愛くるしい存在の機械があるだろうか?
現在においても、強烈なオーラを放ち自身の存在感をこれでもかと主張する。それが70─80年代の日本製「ラジカセ」だ。
高度成長期の真只中、雨後の筍のように世の中に現れ、古代の恐竜のようにあっと言う間に市場から絶滅したポータブルオーディオ黄金期の勇者達である。
撮影:小浜晴美
ラジカセ蒐集はなかなか大変で、探そうと思っても簡単にでてくるものではない。 僕が「ラジカセ」を救済する行動に出たのは今から6年前。 20数年勤めたデザイン会社を退社し救済活動に入った。 その道程は決して順調ではなく、挫折しかかった事が何度もある。 しかしそれ以上に「ラジカセ」の圧倒的な存在感が勝り、今ではディープでアンダーグラウンドな「ラジカセ家業」の世界にどっぷり浸かっているのである。
本書では当時の性能や値段、メーカーは一切関係なく国産で自分自身が直感的にカッコイイと思った物をセレクトしてみた。 「ラジカセ」が放つ機械フェチの萌えデザインを思う存分愉しんでほしい。 そして、この本がまだまだ奥深いラジカセの魅力を感じる手掛かりになればと思っている。
デザインアンダーグラウンド工場長
松崎順一
AIWA TPR-101
W30×H23cm 発売年:1968
島国日本が生んだ世界に誇る合体家電の雄、そのラジカセの中の標準的なインターフェースレイアウトがスタンダード系のラジカセだ。まさにこれぞという顔をどの機種も持っている。しかし、その顔は似ていても様々な個性がある。国産初のラジカセはAIWAから誕生した。その時のレイアウトが後々の各社のラジカセレイアウトに生きている。今でもこの基本デザインは生きていて、デジタルオーディオ等に取り入れられてはいるが、当時のラジカセが持つ圧倒的なアナログ感には逆立ちしてもかなわないのだ。
80年代はある意味ポストモダン復活の時代でもあった。ファッション業界ではDCブランドが次々誕生し、それに従って家電にもモダンデザインの波が襲った。ラジカセもその余波を受けて各社からモダンデザインラジカセが誕生。そしてもう一方ではラジカセを発売する会社が増えだし、価格の安さを売りにするメーカーも現れた。ラジカセ戦国時代の代表作が「チープ&キュート系」なのだ。
TOSHIBA RT-550F <ACTAS550>W17×H12cm
発売年:1975
やはり歴史はくり返されるのか? 古代、恐竜は巨大に進化成長し、突如世の中から絶滅した。ビッグスケールラジカセとは、まさに恐竜と同じ運命をたどった不運な商品なのである。しかし時代が生んだとはいえ、通常の持ち運びを無視し大型化したラジカセには非常に愛着が湧く。ビッグスケール系ラジカセは、ラジカセを語る上でその頂点に位置する今でも憧れの逸品なのである。
HELIX HX-4635 W76×H40cm
発売年:不明
ラジカセは世界的な商品だが「多機能」という日本独特の味付けは世界の追従を寄せつけない。家電好きな人達は、総じてマニアックな人々で「多機能」という言葉に呪術にかかったように吸い寄せられるのである。オーディオ性能の進化という付加から外部装置の付加まで、ラジカセはメーカーの暴走が生んだ「オーバーデコレーション」という世界に突入したのだ。
SONY FX-300 <JACKAL300> W17×H26cm 発売年:1976
ラジカセの成熟期に誕生した女性にターゲットを絞って開発されたカジュアル系。コマーシャルも外人の女性を起用し、「ラジカセと言えば家電好きな男性向け」という当時の常識を破った革新的なセールスも新鮮だった。しかし、このコンパクトなカジュアル系ラジカセは単に小型で女性向けというよりも実際は大型機の性能をコンパクトにした物が多く、実は家電好き男性にもヒットしたのだ。
SANYO MR-WU4mkll
<おしゃれなテレコU4>
インターネットが無い時代、ラジカセを含めた家電やその他の商品の宣伝はテレビやラジオを除いた殆どが雑誌広告やカタログ等の紙媒体だった。だからメーカーは新製品を発売する時は店先で不特定多数の人が目にするカタログに力をいれた。。そんな各メーカーの個性が表現されたカタログは実際なかなか購入出来ない人達の夢見る妄想アイテムとして活用されたのだ。
SONY、National、AIWA、SANYO、VICTOR、SHARP、MARANTZ、HITACHI、TOSHIBA、DENONほかの当時のカタログ表紙を50点以上掲載!
ラジカセにまつわる日記を掲載。『ラジカセのデザイン!』オリジナル版を発刊した2009年当時の工場長・松崎がどれだけラジカセを愛しているのかありありとわかる素敵な短文集。
著者 / 写真 / 企画・デザイン
『ラジカセのデザイン! [増補改訂版]』
SONY
NATIONAL
SANYO
VICTOR
TOSHIBA
AIWA
MARANTZ
PIONEER
HITACHI
RISING
AKAI
BROTHER
BUBU
DIATONE
FAIRMATE
FOURLAND
DIATONE
GENERAL
HELIX
HARVEST
NEC
TEAC
TOBISHI
UFO-SOUND
WESTMINSTER
YAMAZAKI
TOBISHI
DENON
MITSUBISHI